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2-38 サザンクロスに願う 1

last update Last Updated: 2025-03-14 13:03:54

 あの日の夜から数日が経過していた。

朱莉は日本に帰るまでの残りの数日をガイドのエミと楽しく過ごした。

2人で海に泳ぎに行ったり、シュノーケリングをしたり。ボートに乗って初めてイルカと遭遇した時は感動のあまり中々眠りにつく事すらできなかった程だった。

 そして今夜がモルディブ最後の夜。朱莉はエミに夜のビーチに誘われた。

「アカリ、モルディブに来たなら絶対にビーチで星空を見ておかなくちゃね。考えたら今まで一緒に夜空を見上げた事が無かったじゃない」

エミは持参してきた缶ビールを朱莉に手渡した。2人で乾杯をして、良く冷えたビールを飲み、ため息をつくと朱莉は夜空を見上げた。

「すごく星が綺麗ですね。あんまりこの島へ来てから星空を眺める事が無かったので。まるでプラネタリウムを見ているみたいで最高の気分です」

朱莉は笑った。

「あら、中々良い表現をするのね?」

エミはビールをゴクリと飲み干して星を眺めている。

「それにしても……すごくこれって日本では贅沢な事かもしれないですね。この島だから出来る事なんですよね……」

満天の星空から、朱莉は目が離せずにいた。

「ねえ……アカリ。私、いいものを持ってきてるんだ」

「え? いいものって何ですか?」

「ほら、これよ」

エミがカバンから取り出したのは星座表だった。

「え……? これって確か星座表ですよね?」

「うん。これで2人で一緒にサザンクロスを見つけましょ!」

エミは目をキラキラさせている。

「サザンクロスって……もしかして南十字星ですか? 素敵……あの日の夜から数日が経過していた。

朱莉は日本に帰るまでの残りの数日をガイドのエミと楽しく過ごした。

2人で海に泳ぎに行ったり、シュノーケリングをしたり。ボートに乗って初めてイルカと遭遇した時は感動のあまり中々眠りにつく事すらできなかった程だった。

 そして今夜がモルディブ最後の夜。朱莉はエミに夜のビーチに誘われた。

****

「アカリ、モルディブに来たなら絶対にビーチで星空を見ておかなくちゃね。考えたら今まで一緒に夜空を見上げた事が無かったじゃない」

エミは持参してきた缶ビールを朱莉に手渡した。2人で乾杯をして、良く冷えたビールを飲み、ため息をつくと朱莉は夜空を見上げた。

「すごく星が綺麗ですね。あんまりこの島へ来てから星空を眺める事が無かったので。まるでプラネタリウムを見ているみたい
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  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   <スピンオフ> 第3章 九条琢磨 14

    「その男は一体どうやって本田さんの居場所を突き止めたんでしょうね?」琢磨はハンドルを握りながら尋ねた。「興信所を使って調べたそうです。本当ならレンちゃんの居場所を突き止めることも出来たそうですが、下手に近付いて誘拐犯にでもされたらたまらないと思ったそうですよ」「そうですか。興信所を利用して……。興信所の人間は鼻が利きますよね。私は興信所の調査員の知り合いがいるんですよ」その時、琢磨は航のことを思い出していた。「そうなんですか? さすが社長さんですね? 興信所で働いている知り合いの方がいるなんて」舞は感心している。「いや……それほどの人物でもないですけどね……」(何せあの航だからな……)琢磨は苦笑した。「とにかく、それでレンちゃんを自分に渡すように迫ってきたんです。でも私は断固拒否しました。姉からの遺言だったのです。絶対にレンちゃんを父親には渡さないで欲しいって。姉の離婚の原因はあの人からのDVだったのですから」「DV……」琢磨は幼稚園で会った時の状況を思い出していた。確かに言われてみればあの男は今にも舞に手を上げそうな素振りを見せていた。「それなら尚更レン君を渡すわけにはいきませんね」「はい。そう思って私は必死であの子を守ってきたのに……まさか幼稚園の運動会にやって来るなんて思いもしなかったんです」舞は制服のズボンをギュッと握りしめた。「本田さん……」「今もこうしている間に勝手にレンちゃんを連れて行ったりしていないかと思うと心配で……」舞の身体は震えていた。「まだ幼稚園に着くまでは時間がかかりそうなので一度電話を入れて確認してみてはいかがですか?」「言われてみればそうですね。分かりました。すぐに連絡を入れてみます」舞はスマホを取り出すとタップし、電話を掛け始めた。「あ、もしもし。本田ですけど……。あのレンちゃんは大丈夫ですか!? え? 無事? 良かった……。え? まだ父親は幼稚園に居座っているんですか? ……はい。今幼稚園に向かっているので、もう少しだけ待って下さい。はい。よろしくお願いします……」舞はスマホを切ると溜息をついた。「どうやらまだ父親は幼稚園にいるようですね」「はい、そうなんです。園長室にいるようで、レンちゃんを引き渡せと訴えているそうです」「急ぎましょう」琢磨はアクセルを踏む足に力を込めた――

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   <スピンオフ> 第3章 九条琢磨 13

    「え? で、でもそれではご迷惑では……」舞は戸惑った目で琢磨を見た。「ですが貴女が1人で行っても何とか出来るとは思えませんからね」琢磨は運動会での出来事を思いだしていた。「そ、それは……」俯く舞。「とにかく、今はそんなことよりも早く幼稚園に行かないと。いつお子さんが連れ去られてしまうか分りませんよ?」「!わ、分りました……。お願いします……」琢磨は頷いた。「よし、では早速行きましょう!」そして琢磨と舞は一緒に幼稚園に向かうことになった――****「あ、あの……本当によろしいのでしょうか?」会社ビルの地下駐車場に駐車していた琢磨の車に乗り込むと舞は尋ねた。「ええ、問題はありません」琢磨はナビをセットしながら答えた。「でも……大企業の社長さんなのに……」「そんなこと気にしなくて大丈夫です。では行きましょう」琢磨はハンドルを握りしめ、アクセルを踏んだ――****「あの……社長さん……」車を走らせるとすぐに舞が話しかけてきた。「社長さんはやめて下さい。私の名前は九条琢磨といいます」「そ、そうですか……あ、私の名前は本田舞と申します」「本田舞さんですね。分りました」「私と子供の関係についてお話しておきたいことがあるのですが……聞いていただけますか?」「そうですね。出来れば教えていただきたいと思っていました」琢磨はチラリと舞を見る。「はい、あの子……レンは私の子供ではありません。亡くなった姉の子供なんです……」「お姉さんの……」「私と姉は両親を子供の頃に亡くし、ずっと静岡に住む母方の祖父母に育てられてきました。そして姉は大学を卒業すると、すぐに就職のために上京し、2年後に突然男性を連れて帰って来たのです。この人と結婚したいと言って」「それはまた随分唐突な話ですね? その相手があの少年の父親ですね?」「ええ。でも相手の男性は初婚ではなかったことで祖父母は絶対に認めず、2人は去って行きました。その後すぐです。結婚の知らせが届いたのは」舞は俯き、ギュッと手を握りしめた。「なるほど……お姉さんは結局あの男を選んだのですね」「はい。そして私も都心の大学に入り、上京して1人暮らしをしていました。姉とは電話やメールのやり取りしていました。姉の子供が生まれた時も連絡を貰ったし……。そんなある日突然姉から離婚の知らせを受け取

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